まさよしのブログ

日記・読書・スキー等いろんなことについて書いています

背中の勲章 吉村昭 を読んで

 内容は、太平洋戦争時の捕虜「第2号」である中村一等水兵の話です。

因みに「第1号」は、坂巻和男という人です。

この中村という人は、特設監視艇・長渡丸の乗員で、敵を発見したため捕虜になります。

この監視艇は、漁船を改造したもので、敵を発見し友軍に打電したとき、自分の居場所が敵にも発見されるので、攻撃を受け死ぬことは、全乗組員皆、覚悟しています。

実際、敵を発見し攻撃され玉砕覚悟の反撃を試みるのですが、捕虜になってしまいます。

主人公は、こうして捕虜になるのですが、この時代「生きて虜囚の辱めを受くる勿れ」という教育が徹底されていたので、この捕虜生活はかなり苦しいものだったようです。

読んでいる限りでは、かなり恵まれた環境のようには感じましたが、精神的にはかなり辛かったようです。

食事にタバコにコカ・コーラなども支給され、影響面では問題なかったようです。

トランプや相撲など、娯楽も楽しめる環境だったようです。

労働もそれほど過酷なものでもなかったように感じました。

題名の「背中の勲章」っていうのは、捕虜は与えらえた服の背中に、ペンキでPWを書かれます。

何度指で消してもまたペンキで書かれてしまいます。

本人たちは、知らされていないが、ある日から、そのPWが書かれなくなります。

それは、日本が無条件降伏したからです。

主人公は第2号ですが、その後も捕虜はどんどん増え、その捕虜からの戦況を聞くのですが、皆、「日本は必ず勝つよ」と言っています。

イタリアが降伏しドイツ軍が敗北しても「日本は一国になってもやりますよ。絶対に勝ちますよ」と言っています。

最終的には、この捕虜たちは、日本へ返されるのですが、まさか日本が負けたとは思っていなかったようです。

本当は、薄っすらわかっていたのでは?と私は少し思っていますが。

日本へ帰ると以前の日本とは違い、かなり、すさんだ国になっていることなどが書かれていました。

日本へ帰ったとき囚人時の多額の給料を貰ったのですが、戦前30銭だった駅弁が30円になっており、家でも建てれるのでは、と思っていた額が、実はそれほどのものではなかったことなどもかかれていました。

この本は、太平洋戦争を、また別の角度から描いたすばらしい作品だと思います。

 

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