「空白の戦記」と言う本に収録されているなかの1篇。
演習艦隊が台風の影響で激浪に襲われる話。
題名の通り一部の艦がこの台風で艦首切断する。
あってはならない事故。
「船体が切断されたというようなことは、船本来の機能を完全に失っていることをしめしている。たとえ太平洋上の激浪が想像を絶したものであったとは言え、戦闘艦として船体が切断されてしまうようではなんの戦力にもならない」のだそうだ。
時代は昭和十年。
艦を失うことも乗組員が死亡することもあってはならないことだが、それより軍部としては、日本の戦艦の性能がその程度だと諸外国に知れわたるのを恐れていたようだ。
戦力を見くびられたら攻め込まれる可能性がある緊迫した時代だった。
日本の国防に関する深刻な問題であった。
「夕霧」と「初雪」という2艦が三角波の影響で艦首切断した。
艦首の中には生存しているかどうか定かではないが乗組員がいる。
必死の救助活動をするが、救出はできなかった。
また、何度も試みたが艦首を曳航することもできなかった。
機密情報等があるので艦首は沈める事になる。
この事故については関係者全員に箝口令がしかれる。
おわり
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