上なので、下がある。
上を読了しただけなので、まだ、逃亡の途中。
時代は幕末。
長英は幕府の鎖国政策(異国船が接近してきた折には理由を問わず打ち払う)をあやぶみ「夢物語」という論文を書き警告した。
幕府の政策はその後、長英の警告と同じ方向に向くが、この1825年では、長英の警告は、幕府批判になる。
その為、長英は目付鳥居よう蔵によって小伝馬町の牢獄に入れられる。
牢獄を許可したのは老中水野忠邦。
鳥居は儒学を信奉し極端に洋学を嫌っていたため長英を赦免することはなかった。
おそらく生涯牢獄の中で生活することになるだろうと落胆していた長英は、下男に獄舎に放火させるよう依頼し切り離しを狙い脱獄をする。
ここから逃亡の生活が始まる。
この上巻では、江戸から越後まで逃亡する。
手を貸した下男も、逃亡中、長英をかくまった知人たちも幕府にばれた者は捉えられ酷い目にあう。
しかも、問題の鳥居よう蔵は、長英が逃亡している間に失脚する。
それは、おそらく牢獄火災による切り離しで逃亡しなくても指定された場所へ行き、そのまま獄中に戻っていれば釈放された可能性が高いことを意味する。
しかし、すでに逃亡してしまった長英は、逃亡の罪として捕まれば死罪確定だ。
悔やんでも悔やみきれないが仕方がない。
上巻まで読んだ感想は、長英に関係した人たちがその後、幕府の役人から、すごく酷い目あって気の毒なことと、よくそうなることがわかっていながら長英を匿えるな~っていう疑問をもった。
長英を匿うこと自体重罪になることは承知で全力で匿い庇っている。
それだけ長英に蘭学の知識の高さだけでなく人間としての魅力があったのだろう。
幕府の長英探索の執拗さにもすごいものがある。
まあ、脱獄を犯した重罪人なので当たり前なのだろうが、読んでいるとその捜査能力の高さにおどろかされた。
私の中では、昔の話だし、どうとでも隠れられるのでは?と思っていたが、とてもそんな簡単なものではなかったようだ。
下巻で、長英は母のいる奥州の水沢へ向かうことになるはず。
どうなるか楽しみ。
おわり
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