まさよしのブログ

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~生まれてくるのが早すぎた~長英逃亡 下 吉村昭 を読んで

歴史上の人物で、能力は高いが生まれた時代や場所が悪く大成できなかった人ってたくさんいますよね。

この主人公 高野長英もそういう人です。

生まれてくるのがあと少し遅ければ、この人の考え方は世の中(特に幕府)に受け入れられたはずです。

長英の概要を、本書の解説をもとに以下に抜粋します。

「1804年(文化元年)陸奥国水沢に生まれ、医師だった母方の河野家の養子に迎えられ、蘭方医学を学び、シーボルトに師事した。町医を開業しつつ西欧事情を研究したが「夢物語」で鎖国政策を批判したため「蛮社の獄」に連座し、小伝馬町の大牢に永牢(終身禁固)となる。入牢5年後脱獄し、6年にわたる逃亡生活の果てに幕府の捕方に急襲され、47歳の生涯を終えた。」

長英を捕らえたのは鳥居よう蔵という目付で、よう蔵は洋学に悪感情を抱いており特に長英に対しての憎悪が激しかったので、長英は恩赦は望めないと思い、放火を企て脱獄します。

しかし、鳥居よう蔵は、長英脱獄後、2か月で失脚します。

もし、この放火と切り離しによる脱獄がなければ長英は、幕府のもとで大活躍出来ていたかもしれません。

結局、幕府の方針も後々、長英の夢物語と同じ方向になるので長英の考え方は受け入れられたはずです。

しかし、放火に脱獄は大罪。

長英の能力の高さと人間性により、いろいろな人物が長英を匿ってくれます。

それらの人々の庇護を受け逃亡し続けますが、最終的には、上記解説にもある通り、幕府に捕まってしまいます。

この捕まってしまう経緯は事実ではないのかもしれませんが、かなり切ないです。

長英は十手でボコボコにされ、死んでしまします。(自分で喉を掻き切ったとか死因は諸説あるようですが)

また、長英を匿った人たちも幕府にばれた人たちは、とてもひどい目にあいます。

江戸時代の拷問は読むのがいやになるくらい凄惨です。

今の時代に生まれて本当によかったと思います。

長英の能力をかって島津斉彬伊達宗城が接近してきますが、やはり時代が早すぎたため、彼らの力を十分に借りれず捕らえられます。

おそらく、もう少し遅く生まれていれば世の中が彼を受け入れ活躍し、歴史上の重要な人物になっていたのだろうな~と思いました。

ただ、この吉村昭って人は司馬遼太郎と違い、主人公を神格化しないので、結構、長英の負の部分も描いています。

人間味が溢れていて良かったです。(司馬遼太郎の小説も面白いですが)

 

おわり

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