見えない橋に収録されてる短編の1つ 「都会」を紹介します。
25ページほどの短い作品です。
主人公は、小学校の校長を退職し町会長を務める菊島という老人です。
妻は亡くなり、娘は嫁いだので、一人暮らしをしています。
この主人公が、町の公園で寝泊まりしていた亡くなった浮浪者の火葬に立ちあうシーンから物語が始まります。
この浮浪者は、毎日、朝になると自分の寝床の段ボールを片付け、公園の景観を損ねないように箒で掃いて食べ物を得るため繁華街へ行くとう日課を送っていました。
町内の住民からは、不安の声もありましたが、特に問題を起こすようでもないので、菊島は、そのまま警察などには通報せず見守ることにしていました。
菊島がその浮浪者と接触したのは、一度だけで、これから寒くなるということで娘が使っていた毛布を与えます。
浮浪者は、口を利かないが、目で有難く頂きます。
近所のおばちゃんもその浮浪者が気になり、様子を見に食料を与えたりしていました。
ある日、いつも、朝になれば片付けていたはずの段ボールが何日にそのまま放置されていました。
気になった、おばさんが様子を見に行くと、数日前に与えていた弁当はそのまま手つかずで斃れていました。
餓死していました。
菊島は警察や市役所へ連絡します。
そして、最初のシーンの見知らぬ人の火葬に立ちあうことにします。
この浮浪者の身元は不明で、法律に行旅死亡取扱法というものがあり60日間、引き取り人が現れるのを待ったのですが、結局、身元は解らずじまいに終わりました。
最後に、その浮浪者のお参りに行くという話です。
律儀に、段ボールを片付け、箒で掃いたり、食料を求めるのあれば、もっと繁華街の近くに住めばよいものの、公園の欅の下で暮らしていたりと、菊島にとっては気になる点が多々あったようです。
おそらく、普通の浮浪者とは異なり、何らかの事情があったのでは?と感じたのかもしれません。
おわり。
👇これに「都会」が収録されているかどうかわかりませんが一応、添付しておきます。
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