「空白の戦記」の中に収録されている一篇の「顚覆」について感想を書きます。
昭和九年、「友鶴」という水雷艇が訓練中に顚覆する話です。
竣工したばかりの新型艦です。
新型艦なので、もしそれが沈没していたとなると日本海軍造艦技術の敗北を意味します。
国際情勢が緊迫している時代です。
数的に劣勢な日本海軍は、それを補うために質の点で米・英両国海軍を大きく凌駕しなければなりませんでした。
新型艦を失ったことや乗組員が亡くなったこともかなりの損失ですが、それ以上に、日本の造船技術が未熟であることが諸外国に知れ渡ることは、国防上好ましくありません。
訓練は、「龍田」を仮想敵として「千鳥」「友鶴」が砲・雷撃で襲撃するというものでした。
話が変わりますが、「友鶴」って「ゆうずる」って読むのかな?って思っていたのですが「ともづる」でした。
最後の方で女の子の作文があるのですが「トモツル」と書いてありました。
この訓練は激浪との闘いでもあり、とうとう訓練にならなくなったので引き返します。
その帰投中、「友鶴」は顚覆します。
激浪ごときで顚覆はあってはならないことです。
「龍田」は「友鶴」の捜索をし顚覆した「友鶴」を発見します。
艦底をハンマーで叩くと応答があり、生存者がいることが判明。
「龍田」は「友鶴」を曳航します。
生存者は13名でした。
死者72名行方不明者28名です。
助かった人が少数だがいてよかったことと、軍部の事実隠蔽、忖度した報告等、当時の時代背景が窺える作品でした。
ほぼ、ただあらすじを書いただけで感想文になってしまいましたが、これでおわります。
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