題名から船乗りが破船して無人島生活でもするのかな~っと思っていたのだが、内容は全然違った。
地勢的に孤立した村の話で主人公は9歳の伊作という若者。
若者と言うより9歳って子供だと思うのだが、父は家族を食わすために三年間の年季奉公で海鮮問屋に売られているため、伊作が母、弟、妹2人をその間、漁などで養わなければならない。
漁が出来ようが出来まいがやらなければならない。
働き続けなければならない。
魚がいつも体をうごかしているのと同じように。
その生活は滅茶滅茶過酷だ。
この村は土地が瘦せているため農作物はほぼ収穫できない。
よって漁で得たサンマやタコなどを隣町に売りに行き穀物と交換してもらう。
隣町と言ってもこの村からは険阻な山道を通らなければならない。
とれも閉鎖的な村なのだ。
なので個人よりも団体が優先される。
弟も1年後には伊作と共に漁にでるようになる。
読んでいて可哀想すぎる。
ずーっとギリギリの生活。
なんで、題名が破船かというと、唯一村が潤うときがありそれが、輸送船が破船したときだからだ。
それは、村人が破船した船の積み荷を奪うからだ。
これはもちろん犯罪。
この祭事を「お舟様」というらしい。
ただし藩船は絶対に襲ってはならない。
藩船でなくても、これは犯罪行為なので、村人以外の人には絶対に知られてはならない。
題名は「破船」でなく「お舟様」の方がよいような気がする。
この村では、冬の時化の日に夜中に塩焼きをする。
塩焼きは夜でなくても昼にすればよいのだが、要は時化で難波しそうな輸送船をおびきよせ岩礁に破船させるためである。
もちろん出来た塩は隣町に売りにはいく。
この物語では、そのお舟様が3年のうちに2回来る。
一回目は大量のコメなどを積んだお舟様で村がとれも潤うのだが、二度目は・・・・
こんな暗い小説を読んだのは初めてかもしれない。
この本に出逢えてよかったと思う。
死ぬまでに読んでおいたほうが良い本の一つかもしれない。
おわり
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