戦後、戦犯を収監した施設、巣鴨プリズンの刑務官の話。
この主人公は架空の人物だが、この作品の内容は事実らしい。
主人公が監視しているのは、一般的な犯罪者ではなく、戦争犯罪者。
おそらく、平和な世の中であれば、犯罪を犯して収監されることがなかったであろう人々。
無差別な空襲や原爆を落とした戦勝国によって戦争犯罪者とされた人たちである。
自分たちの犯した戦争犯罪は棚に上げ、敗戦国のA,B,C級戦犯は、裁きを受ける。
絞首刑になるものもかなりの数に上る。
絞首台が足りないので、同じ日本人の手によって増設させられる。
主人公は、その刑務官なので、同じ日本人でありながら、戦犯を監視しなければならない。
当然、警備の米軍将兵と収監されている戦犯との間で板挟みになる。
この本を読んで、戦争なんだか仕方ないじゃないかと率直に思った。
戦犯、一般の犯罪者を問わず、死刑制度について少し考えてしまった。
人が人を裁くのは仕方ないとして、命まで奪っていいものか?少なくとも戦犯者は、お国のために、やったことであり、当時の体制では、拒否することもできなかったはずである。
後半は、結構、うるっとくる良い話が多く、読後感はよかった。
この後、渡辺はま子の「モンテンルンパの夜は更けて」をユーチューブで聴こうと思う。