まさよしのブログ

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真昼の花火 吉村昭 を読んで

綿の打ち直し業者の息子である主人公が、Fレイヨンという大企業で、宣伝課から、父の商売敵である寝具課に転属させられる話です。

天然綿花の代わりに人造繊維をふとんのわたに使う洋風ふとんの販売に携わります。

化学繊維わたは打ち直しの必要がありません。

まず、なぜ、主人公は、父の商売である打ち直し業者を継がなかったのかですが、作中に「母は、担任の教諭に学校によばれてから、急に私に勉強することをしきりとすすめるようになった。」とあります。

たぶん、勉強ができたので担任の先生から進学を勧められたのでしょうね。

打ち直し業は、弟が継ぐことになります。

因みに、父、弟は、主人公が、Fレイヨンに勤務していることは知っているが寝具課に転課したことは教えられていません。

主人公は、進学しFレイヨンの宣伝課に勤務することになるのですが、実家が寝具関係の仕事ということで、寝具課に転属させられます。

主人公としては、もとの宣伝課に戻りたかったはずですが、組織の中の一構成員として身を置く者としてどうすることもできません。

また、寝具課の課長(水野)にもいいように使われていることも実感しています

寝具課では、人造繊維と比較し天然綿花は、打ち直しの目減りや煩わしさがあると故意に誇張した広告を作成することになります。

洋風ふとんは、デパートでは好調な売れ行きを見せますが、町のふとん店では売れ行きがイマイチでした。

理由は、綿花わたのふとんより倍以上も値が高く、その上、新製品に対する不安があり、危険を冒してまで買い求める客がいないというものです。

また、ふとん店にとっても打ち直しというのはふとん屋にとって重要な財源であり、打ち直し不要と謳っている洋風ふとんは妙味に欠けます。

店頭に飾るだけで、販売する気がありません。

そこで、主人公は、あまり町のふとん業者を刺激する広告を出すのはどうかと提案します。

しかし、水野課長は、買ってくれるのは消費者であり、消費者さえ味方に引き入れさえしてしまえば、ふとん店は、それに従わざるを得ない。宣伝文を全手面的に見直し、寝具店をはっきり敵として意識したものを作成するように主人公に依頼します。

そんな広告を出したので、その後の展開は、想像通りの展開、結末になります。

読んでいて辛い内容だな~って感じました。

時代の流れでこの小説に登場する打ち直し業者だけでなく、これからも、いろいろな職業が淘汰されていくのだな~っと思いました。

これからはAIの時代。

同じようなことが繰り返されるのだろうと思います。